アスベストを調べる
アスベストは使っていません



 私の通っていた大学の弓道場は、天井に多くの人が「アスベストじゃないか?」と思ってしまう物体が使われている。しかしこれはアスベストではない。なぜなら大学の学生部がアスベストではないと言っているからだ。建物の管理者が言っているのだから間違いはない。

 しかし、部員の中にはそれを疑っている者もいる。見た目がニュースに出てくるアスベストにそっくりだからか、道場の建てられた年代が古いからか、学生部が調査をした結果として「アスベストではない」と言っても信じないものがいる。
 学生部がどんな調査をしたのか知らされていないのだから、疑う気持ちも分からなくはない。だが、だからといって調査を信用せず「これはアスベストに違いない」と言うのは失礼だ。
 となると、取るべき道は一つ。


私がアスベストでない事を証明しよう



 まずは天井の白い物体(以下物体Xとする)を採取する。物体Xがなんであれ、眼に入るのは困るので保護眼鏡をつける。同様の理由で気管を保護するためにマスクをつける。
 これは、物体Xが何であってもするべきことであって決してアスベストではないかと疑っているわけではない。私は学生部の調査を全面的に信用している。
 採取できた物体Xはこれだけである。触った感触は紙か何かのようだ。見た目だけならニュースで取り上げられるアスベストと同様に見える。
 しかし、これは絶対にアスベストではない。偶然見た目が似ているだけのまったく別の物質だ。それをこれから実験で証明していこう。


1.火をつけてみる
 まずはこの物体Xを火であぶってみる。アスベストは燃えないので、火がつけばこれはアスベスト以外の物質ということだ。






全然燃えない


 よく考えてみると天井に燃えやすい材料を使うわけがない。あっさり火がつくようなものを建築材料には使えない。
 燃えてくれればこれでQED(証明終了)だったのに。他の方法で調べるしかなさそうだ。




 しかし、他にアスベストを調べる方法なんて私は知らない。こういう事は『ヤツ』の得意分野であろう。あまり呼びたくはないのだが、この際背に腹は代えられない。酒瓶を用意してっと‥‥。






Yang 「ちょうひ先生〜〜!」
ちょうひ 「うるせえな。今、酒呑んでんだよ。邪魔するな。」
Y  「ちょうひ先生、これ何かわかりますか?」



ち  「ぶっはーーーーーー!!!!中身は水じゃねぇか!」

Y  「ちょうひ先生、これを見てください。」
ち  「それはさっきまで俺が持ってた酒!?返せ!!」
Y  「近付くとこれ捨てますよ。」
ち  「ま、待て。何でも言うこと聞くからやめてくれ。」
Y  「実はかくかくしかじかで、アスベストかどうかを調べたいんですよ。」
ち  「そんなのX線回折法使えば一発だ。」
Y  「一般家庭でそんなことできるか!!」
ち  「じゃあ、偏光顕微鏡で見ればアスベストは色がついて‥‥。」
Y  「一般家庭で出来ること言わんかい!! 酒捨てますよ?
ち  「そ、それだけはやめてくれ。それが最後の一本なんだ。たのむぅ〜〜〜〜。うぅぅ〜〜。」
Y  「うわ、マジ泣きだこの人。もっと普通の人でも出来る方法を教えてください。」
ち  「え〜と、火がつかないことを確かめたならあとは手触りで判断するか、酢酸に溶けるかを調べるくらいしか‥‥。でもこの方法はロックウールにアスベストが混ざっている場合は判断できないぞ。熟練した人間なら普通の顕微鏡で見ただけでもわかるんだが。もういいだろ。酒を返してくれ。」
Y  「十分ですありがとうございました。ビンの中身は少ないようですが、よく味わってください。」
ち  「余計なお世話だ。さっさと行け。」


 これで調べる方法は分かった。せっかくなので出来ることをすべて試してみることにしよう。




2.顕微鏡で観察する
 アスベストは繊維状だ。右の顕微鏡写真(200倍)を見る限り、物体Xの中にも繊維状の何かが多く含まれているのがわかる。
 しかし、アスベストとよく間違えられる物質、ロックウールも繊維状の構造だ。

 文献には「アスベストの方が繊維が細い」だとか、「アスベストは顕微鏡で見ると、繊維が束になっている」と書かれているが、はっきりいって素人にそんなことを判別するのは不可能だ。この写真だけではアスベストか否かは分からない。

200倍





3.手触りを調べる
 掌にロックウールをのせて、指で擦ると粉々に砕け、肉眼で見ても繊維状に見えない。
 掌にアスベストを載せて、指で擦っても砕けず、肉眼で見ても繊維状のままである。

 掌の上で物体Xの塊を押してみると、簡単に砕けた。しかし砕けた破片をよく見ると、繊維状の物が見える。どう判断すべきだろう?
 繊維状の物はあるが、触った感触は石『綿アスベストというよりは、紙か何かに近い。アスベストではないと判断してもいいかもしれない。





4.酢酸に溶かしてみる
 アスベストは酢酸に溶けず膨潤状態になる(液体を吸って膨らむこと)が、ロックウールは酢酸に溶けて気体を発生させる(完全に溶けるわけではない)。
 材質から判断す方法だ。ロックウールには酸化カルシウムが含まれているため、酢酸(市販の酢)に溶ける。中学校の理科で『炭酸カルシウムに塩酸を加えて二酸化炭素を発生させる』のと同じだ。

 家にあった米酢をビンに移して、その中に物体Xをぶち込む。
 これでもかと言わんばかりに気泡が出てくる。表面が泡で真っ白だ。かなり勢いよく溶けているのが分かる。それに伴って異臭がしはじめる。明らかに酢の臭いよりも硫黄の臭いのほうがきつい。この臭いは危険だ。間違いなく排気ガス由来の硫黄酸化物が含まれている。あの辺、アスベストよりも大気汚染のほうが問題なんじゃ‥‥。

※ 締め切った部屋でこの実験をしてはいけません。



 3と4の結果、物体Xはアスベストではなく、ロックウールだという可能性が濃厚である。つまり道場の天井にアスベストは使われていないということになる。やはり学生部の発表に嘘はなかったようだ。

 しかし、わざわざ実験してこれでは面白くな‥‥もとい、まだまだ安心できない
 ちょうひ先生の言葉を思い出してほしい。「ロックウールにアスベストが混ざっている場合は判断できない」。実はロックウールの中にアスベストを混ぜて使用されている場合もあるのだ。しかも壁や天井へのアスベストの吹きつけは1975年に禁止されたのに、アスベスト含有5%以下のロックウールは1995年まで法規制がなかったのだ。
 物体Xがアスベスト含有ロックウールではないとは言い切れない。これはさらに詳しく調べなければ。最終兵器登場である。




5.偏光顕微鏡で観察する
 なんでこんな物を使えるのか。ちょうひ先生の研究室から奪ってきたからだ。表現するのに都合の悪いことはすべてちょうひ先生に押し付けてしまう。こんな便利なキャラクターを作ってくれたkoi2さんに大感謝である。

 偏光顕微鏡で観察すると、結晶質のアスベストは色がついて見え、非晶質(ガラス質)のロックウールは色がつかない
 理由は難しいので省略するが、色のついた繊維が見えればそれがアスベストだと考えていいということだ。

 右が偏光顕微鏡写真(200倍)だが、色はどこにもついていない。かなり念入りに探したが、視界一面青一色でそれらしいものはまったくみつけることが出来なかった。





  非常に残念ではあるが、これだけ調べてその存在が確認できないということは、アスベストは含まれていないと考えるしかあるまい。

結論: 道場の天井にアスベストは使われていない。

 卒業してから不安がぬぐいきれなかったOBも、今現在心配している現役部員もこれで安心だろう。まぁ、私自身は最初から学生部の発表を信じていたのだが。




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