アスベストを調べる2
アスベストって本当に有害なの?



(注)こちらを読む前に必ず アスベストを調べる 〜アスベストは使っていません〜 に目を通してください。

 前回、ある施設で採取した物質について、アスベストが使用されているかどうかを調べた。このとき、私の頭にはいくつかの疑問が残った。
 アスベストと対比して出てきたロックウールとは何か。アスベストとどう違いがあるのか。アスベストが原因で発症するという中皮腫とは何か。そもそもメディアで大騒ぎしているが、そんなにアスベストは有害なのか

 今回はこのあたりの疑問について、ゲストを交えた対話で検証していこうと思う。


(Yang 以下黒文字)こんにちは、ちょうひ先生。今日はお酒は入ってないんですか?

(ちょうひ先生 以下青文字2週間前に連絡をもらったからね。私の開発した方法を持ってすれば、慢性アルコール中毒など1週間で治せるのだよ。

 どうせ人道を1光年は踏み外した方法でしょうから、詳しくは聞きません。さっそく本題に入りましょう。
 まずは前回、物体Xを調べる時に対比物として出てきたロックウールとアスベストの違いについて教えてください。

 一言で言ってしまうならロックウールは人工鉱物でアスベストは天然鉱物という違いだ。しかし、これだけでは分かりにくいだろう。

 そうですね。材料や作り方なんかの違いも含めて説明してもらった方がいいです。

 まずは材質の違いだな。アスベストはそこら辺に転がっている石と同じような素材、主に珪素の化合物だ。それに対してロックウールには酸化カルシウムが多く含まれている。だからロックウールは食酢につけると二酸化炭素が発生するのだよ。

 中学校の時に石灰石に塩酸を加えると二酸化炭素が発生したのと同じようなものですね。

 厳密に言うと石灰石は炭酸カルシウムという少し異なる物質だが、まあそんなところだ。
 次に製造方法だが、アスベストは天然に産出する繊維状の鉱物の総称だ。だから作るのではなく鉱山から掘り出している。それに対して、ロックウールは工場で岩石を1500〜1600℃に熱して液体状にして、それを遠心力などで吹き飛ばして繊維状にしたものだ。プラスチック繊維なんかと同じ作り方だよ。


 その説明だと理解できない人がほとんどだと思いますよ。
 専門知識がなくてもフィーリングで分かるような説明はないんですか?

 注文が多いね。ならばこう言えば分かるだろう。ロックウールは巨大『綿菓子』製造機で岩石を綿状にしたものであるのに対して、アスベストは暗い鉱山の中でつるはしを振るって取ったものだ。まったく違う物だと理解できるだろう。

  

あくまでイメージです



↑ こういう感じですね。とてもよく分かります。それにしても本当にこんな方法でロックウールを作ってるですか?

規模や温度は違うが、原理はまったく同じだよ。ところで何故アスベストの方のモデルが私なのかね?



 さて、いよいよアスベストの発癌性について教えてください。

うん、それについては私の知り合いにもっと適した人物がいる。
 私よりも専門家に直接聞いたほうが信用できるだろう。医学博士号を持つ『Dr.E』を呼んでおいた。


 Dr.Eとはまた怪しげな名前ですね。そもそもちょうひ先生の知り合いという時点であまり信用できないんですが。

 私を信用していないのも甚だ不愉快だが、無理を言ってきてもらったDr.Eに失礼な態度を取るのは許さん。次に同じような発言をすれば人体実験のモデルになってもらう。

 本気で怒ってる‥‥。え〜と、その人はどういった経歴をお持ちの人なんですか?

 京都大学の医学部を卒業し、奈良県立医科大学に勤務して中皮腫の症例を見たこともある正真正銘の医学博士だ。

 え?!演出じゃなくマジですか?
(※ 本物の医学博士の方にお話を聞きました。)

このサイトで使うことは伝えていないので、これ以上の個人情報は書けないがかなりしっかりした人物だと言っておこう。何でも聞いてみたまえ。


 初めまして、お忙しいところお時間をとっていただきありがとうございます。それではドクター、お願いします。
(ものすごく緊張している。)

(Dr.E 以下緑文字はい、よろしく。アスベストについて話せばいいということだよね。専門じゃないから、一般的な医師としての話しか出来ないけどいいのかな?

 それで十分です。あまり難しいことを言われても分かりませんから。

 そう?なんなら車谷先生
(新聞によく出るアスベスト研究の第一人者、奈良県立医科大学教授)に連絡とってもいいよ。そのほうが詳しく話聞けるでしょ?

 いえ、カンベンしてください。個人の興味本位の調査で本物の医学博士の方が出てきただけでも、いっぱいいっぱいなんです。



 それではアスベストに関するお話を聞かせていただく前に中皮腫と肺癌について教えてください。ニュースを聞く限り違う病気のようなんですが、どんな物かよく知らないんです。

 そうだね。正常でない細胞が異常増殖する悪性腫瘍という意味ではどちらも同じ病気といえなくもないよ。

 じゃあ同じ病気ということでいいんですか?

 そういうものでもないんだ。病気になる部位が違うんだ。文字通り肺癌は肺にできて、中皮腫は中皮にできるんだ。

 中皮って何ですか?

 内臓の外側を包む膜のことだよ。他の内臓にも中皮はあるから、ここで言う中皮腫は正確には肺中皮腫と呼ぶんだ。

 すいません、イメージがわかないのでもう少し分かりやすく、出来れば小中学生でも分かるくらいに説明してください。

 それは失礼。じゃあ肺をビニール袋いっぱいに詰めたスポンジだと考えてみよう。スポンジはたっぷりと水を吸っている。この水が酸素(空気)だ。

 なるほど。スポンジが肺で、ビニール袋が中皮という事ですね。

 そのとおり。袋を押せば袋の口から水が出て、手を離せばまた水を吸う。これが呼吸だよ。

 なんか分かってきた気がします。じゃあこのモデルで肺癌や中皮腫は?

中のスポンジにカビが生えてしまったのが肺癌、外のビニールが部分的に劣化したのが中皮腫と考えればいいんだ。

 それなら理解できました。ちなみに治療はどうするんですか?

 肺癌のときは外科手術が多いね。ビニールを裂いてカビの生えた部分は切り取った後、縫い直すんだ。

 病気の部分を取り除いてしまうということですね。中皮腫は同じことはできないんですか?

 肺の中であればスポンジを切り取った分、堆積が減るからビニールを縫うことも出来るけど、ビニールを切り取って穴を開けてしまったら縫えないだろう?

 中がスポンジみたいな物なら強めに引っ張ったりするとか。

 それでつぶれた細胞が正常に働けると思うかい?

 じゃあ中皮腫に治療法はないんですか?

 いや、他の悪性腫瘍(癌を含む)でもやるように、投薬や放射線を使った治療があるよ。ただ、外科手術に比べると時間もかかるし、根絶するのも難しい。治療が難しいということも中皮腫が問題視される原因の一つなんだ。



 中皮腫という病気については分かりました。まずこの中皮腫なんですが、本当にアスベストが原因なんですか?

 前提を疑ってみるのはいいことだね。でもアスベストの関与なしに肺中皮腫になる可能性はゼロに近いんだ。どこの病院でも肺中皮腫が見つかったら、いつどこでアスベストを吸ったか聞かれるよ。

 ということは、新聞で奈良県立医科大学の車谷教授が言っていた『発症率が9.5倍』というのも本当なんでしょうか?

 僕は車谷先生が調査した尼崎では勤務したことがないから、断言は出来ないけどそこまで多くはないと思うよ。実際は5〜6倍ってところじゃないかな。

 じゃあ、統計でそうなったのはどうしてでしょう。

 一つは調査した人の数だろうね。近所にアスベスト工場がないところで、中皮腫の検診なんて普通はしないだろう?調べる対象が多くなって、しかも最初から肺中皮腫をターゲットに調べたんだろうから、普段なら見過ごされるような軽い症状でも引っかかったんじゃないかな。

 確かに、少なくとも私の知り合いには病院で中皮腫の検診を受けた人は一人もいませんね。

 もう一つは発症率の問題だ。中皮腫の発症率は10万人に一人くらいしかないんだ。そうすると、10万人調べた中に発症者が1人か2人というだけでも確率としては『2倍』となってしまう。

 なるほど。たとえば1万人の街の人を調べて、その中に1人肺中皮腫がいれば、他の地域の10倍の発症率となってしまうわけですね。

 そういうことだね。調査対象の数によっては9.5倍も誤差の範囲内に収まってしまう。もちろん、ある程度の修正はしているはずだけどね。

 では、ドクターが医師としての経験から言える発症率の差はどれくらいあるのか教えてください。

 う〜ん、僕が奈良県立医科大学に行く前、別の県にいた頃は「○○病院で中皮腫の患者が出たらしい」という話を年に一度聞く程度だったんだ。それが奈良県立医科大学に行くと、自分のところにも中皮腫の患者が来るようになった。普通は教科書にしか載っていない症例だからね、びっくりしたよ。

 そういえば、奈良って中皮腫多いんですか?

 日本アスベスト(現ニチアス)の工場があるからね。中皮腫患者の数は感覚的には2〜3倍かな。しばらくしてから工場が近くにあるて話を聞いて「ああ、それでか」って納得したんだ。

 「それでか」という事は当時からアスベストのことを知っていたんですね。

 うん。医者の世界ではアスベストが肺中皮腫の原因になるというのは30年前から言われていたからね。クボタが労災として認めたから今になって大騒ぎしてるだけだよ。

 すると今、各地でやってるアスベスト除去が終われば中皮腫騒ぎも終わるということですね。

 そこまで楽観視は出来ないよ。中皮腫の患者はこれから増えるんだから、アスベストを除去したから一件落着とはいかないよ。

 そうか、中皮腫の発症まで30年くらいかかるんでしたっけ。

 ここにWHO(世界保健機関)のデータがある。イギリスのアスベスト輸入量と中皮腫患者の推移を示したグラフだよ。

 日本のデータはないんですか?

日本ではそういうデータを取りたがる人が少ないんだ。

 イギリスにおける『アスベスト輸入量』と『中皮腫による男性死亡者数』の推移。
   棒グラフ:アスベスト輸入量(左目盛り[千トン])
   折れ線グラフ:中皮腫による男性死亡者数(右目盛り[人])


 折れ線グラフの『○』はすべての男性での人数であるのに対し、『●』は1953年以降に生まれた男性での数値。2000年以降は推定。

(C)World Health Organization Classification of Tumours 『Tumours of the Lung, Pleura, Thymus and Heart』 ISBN:92 832 2418 3





 このグラフではアスベストの輸入量は1960年代にピークをむかえているのに対して、中皮腫での死亡率は2020年頃がピークになるのが分かるだろう。アスベストの使用を止めたからといってすぐに中皮腫が減るわけではないんだ。数値はちがうけど、日本でもだいたい同じようになるだろうね。

 そういえば、最終的には年間5000人以上が発症するとか新聞に書いてましたね。それはこれからの事を示してたんですね。

 そのとおり。僕が奈良県立医科大学にいた10年でも5〜6倍に増えていったからね。これからどんどん増えていくよ。まあ、そのころには僕は退職してるから関係ないけどね。

 急にダークな発言になりましたね。ドクター自身が中皮腫になる心配はないんですか?

 危険なのはアスベストの吹き付け作業や除去作業で日常的にアスベストにふれている人と、喫煙者だからね。職場の天井にアスベストがあったという程度なら、副流煙での肺癌や自殺、成人病で死ぬ可能性のほうがよっぽど高いよ。

 すいません、その辺は別の社会問題が関わってきそうなので、それ以上は‥‥。ところで、喫煙はやっぱり発症率を上げるんですか?

 僕が診た中皮腫患者はほとんど喫煙者だったよ。喫煙者のアスベスト吸引で発症率が50倍(非喫煙アスベスト非吸引者との比較)になるというのも、あながち嘘じゃないと思うよ。

 アスベストが煙草のヤニにくっついて溜まってくんでしょうか。

 そうかもね。

 じゃあ、煙草を吸わない私は中皮腫の心配はしなくていいということですね。

 そこまでは言わないけど、他の病気で死ぬ可能性が高いだろうね。アスベストを吸わないにこしたことはないけど、近くで使用されていたからといって、今すぐ除去しないといけないという程のことでもないんだよ。

 ヒステリックにならずに落ち着いて対処すればいいということですね。それではドクター、今日はありがとうございました。

 こちらこそ楽しかったよ。また機会があればよろしく。



 それにしても、ちょうひ先生の知り合いであんなにしっかりした人がいるとは思わなかった。

 失礼なことを言うね。

 あれ?先生いたんですか。

 一応、いっしょに話は聞いていたんだがね。ところでYang君、君の学校でもアスベストが見つかったらしいじゃないか。

 はい。夏休みに調査した時に見つかって、さっそく2学期はじめから工事をやってたんです。学校にしては対応が迅速だなと思ったくらいです。

 なるほど、それは危ないかもしれないな。

 どういうことですか、それは?

 アスベストの除去作業というのは、周囲に飛散しないようにかなり慎重にしなくてはいけない。案外いい加減な業者に当たっているかもしれないよ。特需と言えるほどに除去工事が多かったろうからね。

 学校が結構金持ちなんで、それなりに信用できる業者に頼んでいるはずですけど‥‥。

 信用できる業者がきちんとした手順で作業を行った場合でも、工事後にアスベストの飛散量が増えたという報告もあるくらいだ。30年後が楽しみだね。それじゃあ私もこれで。

 え?!これで終わり?俺の学校はどうなるんだよ。





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