我流Yang派弓道論(上級編)
風に負けない矢の重さ



 私は今年、弓道からアーチェリーの世界に入った。そこで的中(点数)に対しよりシビアなアーチェリーでは、道具に関しても技術や理論に関しても、弓道に比べて深い研究がなされていることを知った。
 そんなアーチェリーの世界でも、もちろん弓道の世界でも、的中を得る上で非常に重要なある事柄が見て見ぬふりをされている。あるいは経験則でのみ論じられていることに私は気付いた。

 その『ある事柄』とは風と矢の関係だ。
 先日、『矢が軽いほうが速く飛ぶため風に流される前に的に到達する』という説と『矢が重いほうが風に流されにくい』という説のどちらが正しいか、何人かの人に聞いてみたが誰も答えることが出来なかった。
 風と矢の飛び方との関係は明らかに物理的な理論で説明できるはずである。にもかかわらず誰一人としてそれをしていない。ならば私がそれをするしかあるまい。

 何故なら私は弓道家でアーチャーで物理教員なのだから。



 弾性エネルギー『U』の弓で質量『m』の矢を放つと速度『v』で飛び出した。
 矢は距離『d』の位置にある的を狙っていたが、横からの風が力『F』で矢を押したため、到達地点に『x』のズレが生じた。



※ 物理が苦手な人は読み飛ばしてください。

  運動方程式より、矢には横向き(図の上向き)にの加速度が生じる。  このときズレ『x』の大きさは
 (tは時間)

であらわされる。
 矢の速度『v』で距離『d』離れた的に到達するまでの時間はだから、ズレ『x』
 ‥‥‥@

となる。
 ここで、弓の持つ弾性エネルギー『U』のすべてが矢の運動エネルギーになるとするとより、ズレ『x』
 ‥‥‥A
※ 弓の弾性力はフックの法則に従わないため『F=kx』『U=1/2kx2』は使えない。

となる。



結論


(x:矢のズレ  F:風の力  d:的までの距離  m:矢の質量  v:矢の速度  U:弓の弾性エネルギー)

 @の式は、風の強さが決まっているときの矢のズレは、
的までの距離の2乗に比例し、矢の速度の2乗と矢の質量に反比例する
ことを示している。

 しかし、矢の速度は、弓の強さと矢の質量によって変化するため、それを考慮して式を立てたのがAだ。

 Aの式から、矢のズレは的までの距離の2乗に比例し、弓の弾性エネルギーに反比例することが示される。つまり
的までの距離が2倍になると矢のズレは4倍になり、弓の強さを2倍にすると矢のズレは半分になる
ということだ。


 そして最も重要なことは、Aの式から矢の質量は矢のズレに関係しないという点である。
 つまり事の発端になった2つの説、『矢が軽いほうが速く飛ぶため風に流される前に的に到達する』という説と『矢が重いほうが風に流されにくい』という説は、



物理的に見るとどちらも間違っているということだ。

 風に流されたくなければ弓を強くするしかない。


※ この計算は高校の『物理T』の範囲で出来るように複雑な因子を排除しています。風の抵抗、弓の弾性力などを詳しく考慮すると、異なる結果が出る可能性もあります。


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