私の旅、切符の旅
18切符の行った先



 年度末ということで、財布の中身を整理していたら、こんなものが出てきた。



 青春18切符。最初に改札で日付のハンコを押してもらえば、その日1日はJRの普通路線が自由に使えるという切符だ。夏、冬、春の長期休暇の期間中しか使用できず、5回分ひとまとめでしかないが2300円で1日乗り放題ということで、私は長距離を移動する時には必ずといっていいほど使う。

 写真の切符は夏休み、既に卒業した大学弓道部の合宿から帰るときに使ったものだ。そのときは、他に使うような機会がなかったので駅の金券ショップで1回分だけ残っているものを買って使った。
 つまり、この切符に押してあるはんこのうち、4個は私以外の誰かが旅した時のものだということだ。


 このハンコの日付と駅名を見ているだけでも、色々な情景を思い浮かべることが出来てなかなか面白い。

   1回目 2回目   名古屋駅 8月3日
 同じ駅、同じ日にちだということは、この2つのハンコは同時に押されたのだろう。2人で同じ行程を辿ったに違いない。
 この2人は恋人だろうか、それとも友人同士だったのか、夫婦だったのか。ひょっとしたらもっと大人数での旅行の中で、たまたま3人分があまったのかもしれないが、この切符からは詳しいことは分からない。
 3回目の出発駅を見ると、18切符を使うわりには長い距離を移動しているようには思えない。このことから私の予想では、年配の夫婦が小旅行に行ったのではないかと思う。予想が正しいかどうか、切符は教えてはくれない。

   3回目   大阪駅 8月4日
 2人の誰かに使われた次の日、切符は大阪駅から次の行程を出発している。1回目2回目を使った誰かの一方が使ったのか、それとも金券ショップにいって1日で売れてしまったのか。時期から考えるに後者が有力だが、やはり切符は語らない。
 3回目に使った誰かはこの日、かなりの長距離を移動している。学生が旅行に使ったのか、サラリーマンが新幹線の代金を節約するために使ったのか。

   4回目   小倉駅 8月13日
 10日ほどのあいだを置いて、切符が出発したのは九州小倉駅。多分、3回目で大阪駅を出発した誰かが帰ってくるのに使ったのだろう。
 その根拠はハンコが押された日付だ。この時期、青春18切符というのは各地の金券ショップでさかんに転売される。よほど客の少ない店でなければ、1日2日でほとんどは売れてしまう。まして、この切符は残り2回分だったのだ。ちょうど往復分の切符が何日も売れ残るわけがない。
 ただし、前の持ち主が売るまでに何日か持っていたとか、買ってから使うまでに日が開いたという可能性も十分にある。それ以上のことは切符に聞くほかない。

   5回目   南小谷駅 8月31日
 4回目に使われてから実に2週間以上、切符は金券ショップから私の元へ移り、財布の中で使われるのを待つことになる。4回目の時にも書いたとおり、18切符というのは転売がさかんだ。そのため私は早めに確保するようにしている。
 そして5回目、信越地方の南小谷(みなみおたり)駅から私の家の近くまで鈍行列車で6時間、家の最寄り駅を出たところで切符の役目は終わった。



 この切符を使い、それぞれの持ち主がそれぞれの旅をした。そしてその行程は本人だけのものではなく、この切符自身が旅をした行程でもある。
 現在、5回の旅を終えた切符は私の部屋のゴミ箱の中で、最期の旅への出発を待っている。


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